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事業の相続(事業承継)

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→平成20年中に活用可能な新税制
後継者確保のための信託の活用
→中小企業における事業の承継の円滑化に関する法律などの活用

事業承継と相続問題

 

 日本の企業の大多数は中小企業で構成されており、なおかつ日本の中小企業が技術的にも優れたものをもっているところが多いということもあり、中小企業の存続を円滑に行いたいということから、中小企業庁のホームページには、事業承継を進めるにあたっての一般的な流れについてのガイドラインが掲載されております。また事業承継の一般論に関するお問い合わせ窓口なども設けていますから、一般的な流れについては、これらの情報などを参考にすることもできます。

 

しかし、圧倒的に多くの中小企業・事業者の場合、その設立の際の金融機関からの借入に関して代表自らが連帯保証人になっていたり、家屋敷を担保に供していたり、事業承継問題と相続争いの問題の双方の問題をクリアする必要があったりと、中小企業において「経営上の課題は、相続法上の課題でもある」といっても差し支えない、という実情があることから、具体論となるとやはり各企業・事業者の規模、特性に応じたオーダーメイドの事業継承/相続プランである必要があるのではないでしょうか?

 

 中小企業の事業承継に関して、最近ではMA等による親族外承継も行われるようになったものの、依然として親族内承継が大多数を占めるという状況にあることから、ここでは主に親族内承継を前提に、相続問題と承継問題の調整の課題解決のために活用可能な税制と法制をご紹介します。

 

平成20年中に活用可能な新税制

 

 平成19年度の税制改正(平成1911日から平成201231日まで効力あり)では、中小企業事業承継の円滑化を目的として「相続時精算課税制度の拡充」と「種類株式の相続税上の取り扱いの明確化」が行われています。

 

 ◆相続時精算課税制度の拡充

 

従来は、申告を前提として、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与を行った場合、2,500万円の非課税枠(限度額まで複数回使用可能)を設定し、これを超える部分については一律20%の課税とされていたものが、事業の円滑な承継のために、中小企業オーナーが、自己株式を後継者たる子(代表者となる場合)に贈与する際の贈与者の年齢要件を60歳に引き下げ、なおかつ非課税枠を3,000万円に引き上げました。

 

 ここで言う中小企業とは、発行済株式等の総額が20億円未満の会社のことであり、受贈者(贈与を受ける者)が代表かつ、株式等の50%超保有者となることが必要要件であり、特例選択後4年経過時点で、この基準を満たしているか否かがチェックされることに留意しておく必要がありますが、活用できないか注目して確認しておくべき税制といえるでしょう。

 

 またこの制度を選択した場合、贈与時の時価で贈与財産を相続財産と合算して相続税額を計算することになります。

具体的には、贈与額から非課税枠3,000万円を控除した金額に、20%を乗じた金額が贈与税額となり、この時の贈与額と、相続額を合算した金額から、基礎控除(5,000万円+1,000万円×法定相続人数)を控除した金額に、1050%の累進税率を乗じた金額が100万円よりも大きければ納税義務が生じ、100万円未満であれば還付を受けられるということになります。

  ◆種類株式の相続税上の取り扱いの明確化

 

種類株式とは、会社法(旧商法)の中で規定された『配当優先の無議決権株式』、『社債類似株』、『拒否権付株式』などのことですが、相続の時にどのように取り扱われるかが不明確であるとの指摘を受けての改革です。

 税の問題もさることながら、うまく活用することで相続と事業承継の2つの難問の最適解を見出すことが出来る制度ですので是非とも検討してみるべきでしょう。

 

『配当優先の無議決権株式』とは、総会での議決権がない株式であり、金額評価としては普通株式(議決権あり)と同様に評価することが原則ですが、相続時に納税者の選択により、相続人全体の相続税評価額が不変という前提(無議決権株式の評価減分を議決権株式に加算)で、議決権がないことを考慮して、普通株式評価額から5%を評価減することが可能とされました。

 

『社債類似株式』とは、一定期間後に償還される特定の無議決権+配当優先株式のことであり、下記条件を満たすものは社債に準じた評価(発行価額と配当に基づく評価)をすることとなりました。

   1.優先配当

   2.無議決権

   3.一定期間後に発行会社が発行価額で取得

   4.残余財産分配は、発行価額を上限

   5.普通株式への転換権なし

 

『拒否権付株式』とは、総会の決議に対する拒否権を行使できる株式(いわゆる「黄金株」)であり、税務上の扱いは普通株式と同じです。

 以上を事業承継に使う場合、例えば、後継者に経営権を集中したいが相続人が複数あり、揉め事が起こる可能性があれば、後継者に普通株式(議決権あり)を相続させ、非後継者に「配当優先の無議決権株式」または「社債類似株式」を相続させればよく、また権限を後継者に委譲した後もしばらくの間、後継者の独断専行を防止して、じっくりと経営を見守りたいのであれば、「拒否権付株式」を発行、自らが保有し、権限委譲後一定期間保持し続けることで、後継者の独断専行に対する牽制効果を期待することが出来ます。 

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中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律などの活用

 

  中小企業の事業承継を本格的に支援するため、相続時の遺産分割や資金需要、相続税負担の問題などのさまざまな問題に対応するための支援策が盛り込まれた中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律が平成20年5月9日、国会で可決、成立しました。

中でも遺留分に関する民法の特例が設けられ、後継者に生前贈与した自社株式につき、推定相続人全員の合意など一定の手続きを経れば、@贈与株式などの遺留分算定基礎財産からの除外、A贈与株式などの評価額のあらかじめの固定化をすることができるようになりました。これで、経営者は後顧の憂いなく、後継者に確実な支配権を伴った経営を生前に移譲することができます。

 

また、相続に伴って生ずる資金需要に対する金融支援策として信用保証協会の保証枠の拡大や中小企業金融公庫、国民生活金融公庫の融資制度の拡充が行なわれるようになります。

さらに、取引相場のない株式の納税猶予制度が創設されました。
平成21年度税制改正において事業後継者を対象とした『取引相場のない株式などに係る相続税の納税猶予制度』が創設されました。これは、相続などにより取得した議決権株式などに係る課税評価額の80%に対応する分の相続税の納税を猶予する画期的な改正です。

なお、この法律に定める中小企業とは、中小企業基本法に定める範囲とされており、資本金・従業員が、製造業では3億円・300人以下、卸売業では、1億円・100人以下、小売業とサービス業で、5千万円・小売50人、サービス100人以下…などとなっています。

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後継者確保のための信託の活用

 
 
信託とは、特定の人(=受益者)の利益のためにする目的で自己の財産を第三者(=受託者)に移転し、その管理・処分を委ねる契約のことを言います。


  個人事業や農業の継承で最も悩ましいのが、事業主の相続により事業用資産も遺産分割されてしまい、その後の事業の継続が困難になりかねないことです。多くの場合、事業用財産は分割せずに後継者に集中させる旨を遺言にしておきますが、後継者以外の相続人が「少なくとも遺留分だけは譲らない!」と頑張ってうまくいかないことも少なくありません。
  こうした場合に備え、@代償分割の形にするなど、遺言の書き方を工夫する方法がありますが(遺言についてを参照下さい)、この他にもA後継者を受託者とし、事業に関わらない他の相続人を受益者とする事業用財産の信託を設定して事業の存続をはかる方法があり、このような信託は契約だけでなく遺言でその設定を指示することができるため、実情に応じ@かAでより自分に適した方を遺言内容として選択することもできます。

 また、子がなく、元から後継者がいない事業者の場合は特に自分の死後の配偶者の生活が気に掛かるでしょう。そこで自分の兄弟や縁者から、生存配偶者が死ぬまで生活の世話をすること条件に事業の承継人(実質的には事業用を含む財産の負担付遺贈の与え先)を指名することになるかと思われます。
 こうした場合の事業が先祖代々受け継いできた財産によるものであった場合には、当該の遺贈はあたかも家の後継ぎを得るための手段に映るため、戦後民法の自由平等原則にそぐわないとして一般には無効と考えられていますので、これまではこうした要望の実現は事実上無理だったのですが、新しい信託法の「受益者連続信託」という制度を利用することにより可能となりました。

 この他、信託制度は、高齢者や障害者の財産管理・悪徳商法から保護のための手段にも活用できそうです。
 また民事の分野に限らず、たとえば企業が有望な事業部門に自らが受託者となる信託(=自己信託、ただし平成20年10月までは施行されず)を設定して資金調達を図ったり、逆に不採算部門を切り離し再建能力のある受託先に託すなど、経営上の利用価値も大きいと言われます。

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