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遺言について

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遺言の意義と必要性

1.遺言は、個人の生前の意思をその死後に実現させるための制度です。
遺言は、自分の死後の財産の処分、遺産分割の方法の指定等の財産に関する行為のほか、婚外子の認知、相続人の廃除、後見人の指定等の身分行為、祖先の祭祀の主宰者(系譜、祭具及び墳墓の所有権を継承する者)の指定等をすることができる多様な機能を持っています。

2.遺言の方法として普通に使われているのは、公正証書遺言と自筆証書遺言ですが公正証書遺言は自筆証書遺言に比べてはるかに優れていますので、遺言全体に占める公正証書遺言の比率は極めて高く、かつ年々増加しています。これは、近年の不動産価格の高騰による財産価値の増大等によって遺産分割をめぐる親族間の紛争が激増していることによるものと考えられます。

このような紛争を未然に防止するために遺言、殊にその方式において公正証書遺言が活用されているのです。

当然ながら、遺言がなかったら法定相続による遺産分割がなされてゆきます。
夫婦と子一人の場合はおおむね問題がないと思われますから遺言は要らないかもしれません。しかし、他の組み合わせの場合、相続人の縁者の中には法律に詳しい者もいて、いろいろ雑音を立てる恐れがあります。

また、一般的に遺産の6割以上が不動産でしめられていますから、これを分けるとなると原則は各自の持分で持って共有する形の共有分割ですが、これは兄弟での共有のうちはよいのですが、いとこの関係に入ったら、共有関係の解消は殆ど不可能です。

代償分割するには他の相続人の取り分を補償するために遺産を引き継いだ相続人自身に相当な資力が必要ですから、家業の承継など特別な必要性がある場合に限られます。

そこで多くの場合、仕方なく換価分割して一旦土地建物を売却し、現金化した上でこれを分け合おうという話になると思われますが、時間と手間がかかる上に希望価格で物件が売れるとは限りません。換価の過程において、親しかった親族間に心の傷が広がることも考えられ、そこに居住していた相続人は別の居所に移るわけですから費用もかかり、そこに新たな争いが生じます。

もっとも相続人間には現実には力関係があり、ある程度の譲歩をする人も出てくるでしょうが、往々にして親の死亡の時期は子供たちの子、つまり、孫の教育費のかさむ時期と重なりますから、国が国民に認めている最小の相続分である遺留分については共同相続人のすべてが簡単に譲歩するとは限りません。

介護などで、献身的に面倒を見てくれた方など生前お世話になった人や団体に遺贈や寄付をしてあげたいと思っても、相続人の遺留分を考慮した上で遺贈・寄付したい財産を明らかにし、遺言執行者を指定する内容の遺言を書いておかなければ、相続人にとっては決して快いものではないことですからその実現が難しくなってしまいます。

農業を長男に継がせたい、八百屋の店を二男に承継させたい、と願う親は大勢いますが、家業の継続のために営業用資産が細切れならないよう「後継者が全てを相続する代償分割を命じる」旨の遺言を書かなければ思い通りにはいきません。

あるいは別の手立てとして、平成17年末に継続された「相続時精算課税制度」を利用して将来の遺留分相当額の現金を生前贈与することで他の子供たちに遺留分を遺言者が生きているうちに放棄させる方法も出てきましたが、この遺留分の生前放棄には家庭裁判所の許可が必要な上に遺留分を請求する権利と法定相続の権利とはそれぞれ別物ですから、別途「後継ぎ以外の子供たちの相続分はない」旨の遺言をしておかなければ、他の子供たちに遺留分放棄させようとした工夫は結局無駄になる可能性大です。

相続分や遺留分を埋め合わせてやろうとの親心から、生命保険金が他の子たちにわたるように手当しても、親の死後、子が豹変して保険金は遺産には含まれないなどと法理論を振りかざさないとは言い切れません。

家族が多くなり、葬儀や祭祀承継についても、国民の意識は変わりつつあり、いまでは「喪主を誰がやるか」などといった問題で、親族間に争いが起きる例があると聞きます。
民法897条には祭具等の承継についての規定があり、遺言で祖先の祭祀を主宰すべき者を指定できるようになっています。
遺言の方式として自筆遺言よりも公正証書遺言が優れている最大の理由は、自己の最後の意思を親族や関係者に確実に伝えるのに最適な方式だということです。
公正証書遺言であれば表現や内容は、公証人とプロの目を通してから作成されますから間違いがありません。さらに遺言原本は公証役場に半永久的に保管され、謄本を紛失しても大丈夫。信託銀行に遺言信託を頼んで原本保管料をあたら出費する必要もなく、死後遺言がほぼ確実に相続人に認識されるわけです
さらに重要なのは、公正証書遺言には家庭裁判所での開封実在証明の手続(検認)が不要なので遺言で譲渡された預貯金の引き出しや名義変更を譲渡を指定された相続人が単独で銀行・法務局等に請求でき、窓口で速やかに処置してもらえるため、相続人受贈者にとっても受け継ぎの事務手続の負担を軽くし、時間も短縮できるという利点のあることです。

但しいくらあなたがきちんとした遺言を作成して遺しても、いざとなると親族間の力関係から遺言書を隠し、他の相続人の指示に従って遺言の内容に背くような遺産分割の要求に迎合してしまう配偶者の例があります(プロが遺言執行者になっていれば避けられる問題ですが)。

これは、単に遺言者たるあなたの遺志が無視されるというだけにとどまらず、民法891条の『相続人の欠格要件』に該当し、後日大変な結果を招く可能性があります。

遺言を作ったら、連れ合いにはその事実を知らせ、よく言い含めておきましょう。

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公正証書遺言のすすめ

公正証書遺言の主なメリットをまとめると次のとおりです。

1.公正証書遺言は、公証人が遺言者と十分に話しあって作成されますので遺言者の真意、遺言の内容について法律的な疑問やあいまいさを残すことがなく、最も確実な方法による遺言であると言えます。

2.公正証書遺言の原本は、公証役場に半永久的に厳重に保管されるため、紛失したり変造されたりする恐れがありません。

3.公正証書遺言は、自筆証書遺言又は秘密証書遺言とは異なり、遺言者の死亡後に家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。

4.その遺言公正証書により、すぐに登記等の手続きができます。

5.日本公証人連合会では、平成元年からコンピューターによる遺言検索システムを導入しているので公正証書遺言の存否が速やかに確認できます。

公正証書遺言の作成手続

公正証書遺言は、公証人が2人以上の証人の立会の下に、遺言者から直接遺言の内容を聞き取ってこれを筆記した後、これを遺言者及び証人に読み聞かせるなどして、正確であるかどうかを確認します。

間違いのない事を確認した後、遺言者、証人が署名押印し、さらに公証人が署名押印して作成されます。なお、遺言者が署名できないときは、公証人が署名を代筆することもできます。

この公正証書遺言は、遺言者が公証人役場に出向いて作成するのが普通ですが、遺言者が病気等で役場に出向くことができないときには、公証人が遺言者の自宅や病院まで出張して作成することもできます。

公証人に公正証書遺言の作成を依頼する際には、あらかじめ、次の資料を用意して持参する必要があります。

※遺言者の印鑑証明書(3箇月以内に作成のもの)
※財産を貰う人が相続人である場合には、戸籍謄本
〃その他の場合(受贈者)は住民票
※遺産が不動産である場合は、土地・建物の登記簿謄本及び固定資産評価証明書
※証人2人の住所、氏名、生年月日、職業を記載したメモ、住民票等

以上のほか、遺言内容を整理したメモがあった方が作成がスムーズです。

遺言者が口がきけない方や耳が聞こえない方である場合の方法

口がきけない方や耳が聞こえない方の遺言の場合、遺言者は、通訳人の申述(手話通訳)又は自書(筆談)によって遺言の趣旨を公証人に伝え、また、公証人は、通訳人の通訳又は閲覧によって、遺言者に公正証書の記載が正確であるかどうかを確認します。

証人について

公正証書遺言については、必ず、2人以上の証人の立会いが必要です。
証人は、未成年者のほか、遺言内容と利害関係の深い人はなることができません。
即ち、遺言者の推定相続人及び受遺者並びにそれらの者の配偶者及び直系血族は証人になれません。弁護士、行政書士等の有資格者による証人が最適です。
なお、この証人は、公正証書遺言の作成に立会い、公正証書が正しい手続きに従って作成されたことを証明するもので、借金の保証人のような責任を負うものではありません。

遺言執行者の指定

遺言の執行とは、遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた後、遺言の内容をそのとおり実行することです。
遺言執行者は、遺言で指定された者又は家庭裁判所により選任された者がなります。
遺言執行者は、遺贈された不動産について登記手続をするなどの際に重要な役割を果たしてくれます。遺言により、遺産を貰う人(相続人又は受遺者)を執行者とすることもできます。
遺言執行者を必要とする場合に、遺言で指定しておきませんと、遺言者が死亡してから家庭裁判所で選任してもらうことになり、手数と時間がかかります。あらかじめ、遺言公正証書にその指定をしておくのが望ましいです。

遺言執行者がある場合は遺言書に掲げられた財産については、遺言の効力が生じた後は遺言執行者以外の者が法的手続を執ることはできません。

公正証書遺言の取消又は変更

遺言者は、公正証書遺言をした後、遺言者の周囲の事情や心境の変化が生じたときは、いつでも前にした遺言の一部又は全部を取り消したり、変更したり、新しい遺言をしたりすることができます。

しかしながら、公正証書遺言を作成したにもかかわらず、その後自筆遺言で当該公正証書遺言を全部取り消すという内容の遺言を書いた場合には、後日相続人間で自筆証書遺言の効力について紛争が発生することは必至です。公正証書遺言を作成した場合には、費用はかかりますができる限り当該遺言書作成担当の公証人自身に撤回の公正証書遺言を作成してもらうのが賢明です。

遺言後に遺言をした財産を自ら処分(消費)した場合

公正証書遺言は、遺言者の死亡によりその効力が発生します。
遺言者は、遺言をした後死亡するまではいつでも遺言の目的の財産を処分することができます。たとえば、遺言者は、ある土地を甲に与える遺言をした後、その土地を乙に売却することもできます。

このように、遺言者が遺言をした後に、遺言と矛盾する財産処分をしますと、その限度で遺言の取消をしたものとみなされます。

遺言と遺留分の関係

遺言者は、遺言で、その所有する財産を自由に処分することができます。
したがって、極端な場合、遺言者が全部の財産を、妻子にやらないで、他の特定の人に遺贈すると言うこともありうるのです。しかしこのような場合、法律は遺言者の財産処分の自由と相続人の利益を調和させるため、相続人(およびその承継人)に一定の割合による財産相続を保障しています。これが遺留分の制度です。

この遺留分の割合は、法定相続人が配偶者と子(孫)のときは法定相続分の2分の1、父母(祖父母)だけのときは法定相続分の3分の1です。

兄弟姉妹には遺留分はありません。ですから、推定相続人が配偶者と自分の兄弟姉妹の場合に遺産を全て配偶者に相続させたいときには、その旨の遺言を残すことで準備万全となる訳です。

一方、遺留分を侵害する相続、遺贈を内容とする遺言があったときは、遺留分権利者は、その遺言のあることを知った時から1年以内に自分の遺留分を保全するのに必要な限度で取り戻すことができます。この請求を遺留分減殺の請求と言います。
しかし、1年以内にこの請求をしなければ、この権利は時効によって消滅し、また、これらのことを知らなくても、相続開始から10年を経過するときは、請求することができなくなります。

遺留分減殺請求をするかどうかは、遺留分権利者の意思によるものですから、遺留分を害する恐れのある場合だからといって、そのために公正証書遺言の作成を公証人に拒否されることはありません。

付言事項について

付言事項とは、法律に定められていないが遺言中でぜひ伝えておきたいとして補足的に注記する事項のことを言います。ですから付言事項には法的な効力は生じません。だからといって書いても無駄ということではありません。
公序良俗に反しないことで、伝えたい希望や事実、訓戒などを遺言に付言することで遺言者の真意を強調し、法的な効力がなくても残された人たちが心服・納得して希望や遺言内容を実現することを期待して記載される例が増えています。希望の例としては以下のようなものがあります。

●葬式や法要の方法の付言
●死後の臓器移植についての付言
●遺体の処置方法の付言など

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